昨年の7月31日に起きたこの事件を、みなさんは覚えておられるでしょうか。
クリーニング店を営んでいた小川健次郎さん(80歳)が、認知症を患ている妻、富子さん(73歳)を
介護疲れの果てに、絞め殺してしまった大変痛ましい事件です。
「殺したいとは多分、思ってはいなかった。抵抗されれば、力を緩めたかもしれません。ただ、これだけ
はハッキリ言えます。私が先に死んだら、家内は私よりも大変だったでしょう」と。
8年間の介護の末の出来事でした。
介護施設への入居も考えたようなのですが、空きがなく順番待ちの状態だったようです。
50年連れ添って、子供はいないが優しい性格の妻、富子さんが、認知症によって変わっていく姿を
どうしようもなく一人で抱え込み、このような悲惨な事件になってしまったのでしょう。
地域社会全体が介護者を支えるシステムが一刻も早く必要だと思いました。
妻、富子さんの最後の瞬間、健次郎さんが絞めても、富子さんは拝むように両手を合わせ、身動き一つしなかったそうです。
そこには、50年連れ添った二人だけに通じる何かがあったのかもしれません。
健次郎さんは、「家内も望んでいたのかもしれません」と涙を溜めながら語られた姿に、
このような悲劇を二度と起こしてはならない。看護や介護を行わせていただいている一人として、
大変重く受け止め、これからの訪問看護にも生かしていきたいと思います。
富子さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。